現代の環境問題・1
連載開始にあたって
松下 秀鶴
1
,
中澤 裕之
2
Hidetsuru MATSUSHITA
1
,
Hiroyuki NAKAZAWA
2
1国立公衆衛生院地域環境術生学部
2国立公衆衛生院衛生薬学部薬品化学室
pp.254-255
発行日 1990年4月15日
Published Date 1990/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900072
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- 文献概要
日本の工業は朝鮮事変を契機に驚異的な復興・躍進を遂げ,京浜・京葉,中京,阪神,北九州の各地域を中心に巨大工業地帯が形成された.急激な工業の発達と国民生活の向上に対応して,電力需要も急増し,エネルギー源も石炭から石油に変換されていった.昭和30年代に入ると石油コンビナート周辺での大気汚染,また鉱山や工場廃水による水質汚染などが公害として社会問題となった.このころの公害は,水俣病,イタイイタイ病,四日市喘息に代表されるように,工業地帯や一部の地域に限定された問題であった.そして,これらの公害に対処するために昭和40年代に入って,「公害対策基本法」などによる法的な規制が実施され,環境中の汚染物質濃度も改善されるようになった.企業レベルでの環境汚染対策は確かにその成果を表し,事実,環境大気中の亜硫酸ガス濃度は年々減少し,現在ではほとんどすべての測定局で環境基準をクリアーするようになった.また,汚れのひどかった河川にも魚が戻って来たというようなニュースを聞くようになった.窒素酸化物や浮遊粒子状物質など依然として問題となる物質は種々あるが,公害という言葉が以前と比べて強い響きをもたなくなりつつある.
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