映画の時間
—今を切に生きる人々に贈る、心温まるヒューマンドラマ—ココでのはなし
桜山 豊夫
pp.1160
発行日 2024年11月15日
Published Date 2024/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210422
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グランド・ホテル形式と呼ばれる映画があります。1933年にアカデミー作品賞を受賞した『グランド・ホテル』にちなんで、そう呼ばれるようになったといわれますが、ホテルのような特定の場所を舞台にして、そこに集まる人々を描く群像劇をいいます。必ずしもホテルだけが舞台というわけでもありませんが、三谷幸喜監督作品の『THE 有頂天ホテル(2006年)』などは正統派のグランド・ホテル形式と言えるでしょう。今月ご紹介する『ココでのはなし』はホテルではありませんが、ゲストハウスという宿泊施設を舞台にしており、グランド・ホテルの系譜に連なる映画と言えるかもしれません。
舞台は2021年の東京の下町、作品中で明示はされていませんが、スカイツリーの見え方からすると墨田区か台東区の辺りでしょうか、主人公の一人、博文(結城貴史)がバイクを売ろうとしている場面から映画は始まります。バイクはホンダ・カブ、往年の名車ですが、1万円にしかならず、博文は売るのをやめて、自宅へ戻ってきます。彼は親から受け継いだ自宅でゲストハウス「ココ」という宿泊施設を営んでいます。親はすでに亡くなっているようですが、母親の幼なじみの泉さん(吉行和子)がココに住んで(長期宿泊?)いるようです。ココには、もう一人、アルバイトの戸塚詩子(山本奈衣瑠)が住み込みで働いています。
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