連載 保健行政のためのデータサイエンス・1【新連載】
ヘルスサービスリサーチについての総論
田宮 菜奈子
1
1筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野
pp.242-245
発行日 2023年3月15日
Published Date 2023/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210009
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本連載への思い・経緯
1.HSRとの出合い
筆者は、実は学生時代から、在宅医療など当時診療報酬の枠組みにない地域医療の推進に関わりたく、地域に直接アプローチができる行政職に憧れ、保健所医師を目指していた。しかし医学部最終学年において、新たな施策を行政として広めるには、地域のニーズや期待される効果などエビデンスが必要であるが、その構築が難しいことに気付き、まずはデータから地域のニーズや課題を分析する方法を身に付けるべく公衆衛生の大学院に進学してしまった。当時は大学院に行きながら臨床研修を行えたこともあり、上記のような視点で臨床をしているといろいろな課題に気付いた。まずは自身が初めて担当した脳血管障害の患者さんが、リハビリで自宅退院レベルになったものの、自分が退院後の調整をきちんとしなかったために、相談なしに別の病院に転院し、それを知らされなかった苦い経験がある。急性期の病院から地域にスムーズに流れなければ、医療も無駄になってしまうことを痛感した。それ以降、大学院修了時に行政に進むことも考えたが、日本において地域のデータ分析により保健医療行政を含めたサービスを振り返るという部分が諸外国に比して大変遅れていることに気付き、研究職にとどまった。そして米国に留学し、主に医療サービスの評価方法として体系化された学問ヘルスサービスリサーチ(以下、HSR)に出合った。
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