特集 がん検診—見えてきた問題にどう取り組む?
扉
中山 富雄
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1国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部
pp.143
発行日 2020年3月15日
Published Date 2020/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209340
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わが国では,1983(昭和58)年から老人保健法に基づき,国策という形で住民に対するがん検診が行われてきました.すでに早期発見法の開発が進み,かつ罹患率・死亡率の高い5つのがん種に対して,関連学会や研究班での議論を踏まえて導入されたという経緯があります.当時から職場で検診が提供されており,「職場で検診を提供される機会のないもの」を住民検診の対象と定義したため,受診率の分母さえ推計することが困難でした.その後,「がん検診無効論」や検診費用の一般財源化によって検診の中止や国の推奨外の検診の導入などの大混乱を招き,現在に至っています.がん検診は,症状がなく生活に支障のないものを対象とし,公費を用いて医療に結び付ける行為です.よかれと思ってやっていることに本当に効果があるのか?不利益はないのか?という議論が区市町村レベルで十分できているとは思えません.
がん対策推進基本計画の中で,がんの早期発見・検診ががん対策の柱の一つと位置付けられ,自治体の検診担当者だけでなく,拠点病院や地域の公衆衛生従事者の間で議論の俎上に乗るようになりました.継ぎ接ぎで構築されたシステムの矛盾は目を覆うばかりで,今後どうやって解決していくのか大きな課題です.
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