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はじめに
2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を目前にして,訪日外国人の数は増加の一途をたどっている.関西でも2025年に日本国際博覧会(大阪・関西万博)が開催されることが決定しており,それに伴って訪日外国人対策が注目され,議論が行われるようになってきている.
りんくう総合医療センター(以下,当院)には2006年に国際診療科の前身である「国際外来」が開設され,10年以上が経過した.筆者(図1)は2007年からスペイン語通訳ボランティアとして活動しており,現在は外来の副看護師長として職務する傍ら,国際診療科(2012年11月に開設)の業務を兼任している.日々,外国人患者への対応を行っているが,世間では「国際診療」や「外国人診療」が特別なもののように騒がれているように感じている.特に言語や習慣に特化して考えられ,外国人患者は「社会的弱者」として語られていることが多い.
当院の国際診療科は,病院内スタッフが外国人診療を行う上で,かゆいところに手が届くようなサービスを提供するための潤滑油の役割を行っている.そうすることで,病院スタッフたちがそれぞれの持つ責務を遂行することに専念でき,医療チームとしてのアウトカムをより良いものとできる.医療スタッフの中には,あらゆるコミュニケーション方法を駆使して外国人患者への対応を行う者もおり,その真摯で実直な姿勢が,より良いアウトカムの一助にもつながっている.しかし,筆者は,国際診療科の一番の成功要因は,外国人患者のセルフマネジメント能力の高さではないかと感じている.外国人患者の持つセルフマネジメント能力から,今の日本国民の健康管理のあり方への大きなヒントを得られるのではないかと思っている.
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