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はじめに
地域の歯科口腔保健施策を推進する上では,当然ながら「全ての住民の歯・口腔の健康づくりを支える歯科保健医療施策」が求められる.しかし,行政の保健担当部局に身を置く筆者にとって,特に学齢期および障がい者を対象とした歯科口腔保健の推進は,他の領域における歯科関連施策に比べて,より多くのエネルギーを要する印象が強い.学校現場や教育委員会という存在は異次元の高い壁としてそびえており,また,障がい者に関わる種々の制度やサービスなどへの理解不足はスムーズな施策展開の障害となることを,これまで身を持って経験してきた.
筆者が生まれ育ち,暮らす北海道(以下,道)は東京都の約38倍の面積を有しており,一方で人口密度は低く,過疎化が着実に進行している地域である.そして,医療資源においては都市部を中心とした地域偏在が指摘されている.
道では2009(平成21)年に「北海道歯・口腔の健康づくり8020推進条例」(以下,条例)が制定された.学校などにおいてフッ化物洗口(フッ化物の水溶液を用いてブクブクうがいを行うむし歯予防法)を推進するとともに,障がい者の歯・口腔の健康づくりのための支援も条文に盛り込んだ1).歯科保健医療施策については,同条例に規定される「歯・口腔の健康づくりに関する基本的な計画」である「北海道歯科保健医療推進計画」2)(8020歯っぴぃプラン)に基づいて進めてきた.
道の歯科口腔保健は,特に12歳児の1人平均むし歯本数といったむし歯の罹患状況が全国的に下位レベルで推移しており,大きな健康課題となっている.また,障がいのある人などがアクセスしやすい歯科医療機関の充実が望まれており,整備の途上にある.
本稿では,特に学齢期におけるむし歯予防対策としての「フッ化物洗口の推進」と,「北海道障がい者歯科医療協力医制度」3)を軸とした,障がいのある人への歯科保健医療提供体制の整備について述べる.併せて,2013(平成25)年に設置した「北海道口腔保健支援センター」の活動も紹介する.
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