特集 循環器疾患を予防する
リスク因子の集積・メタボリックシンドロームと循環器疾患
久松 隆史
1
1島根大学医学部環境保健医学講座
pp.350-355
発行日 2019年5月15日
Published Date 2019/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209138
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
循環器疾患の古典的なリスク因子である肥満,高血圧,糖尿病,脂質異常症が合併しやすいことは以前から知られていた.現在では,腹部肥満,特に内臓脂肪型肥満(インスリン抵抗性)を基盤として,血圧上昇,血糖高値,脂質異常が集積した病態が「メタボリックシンドローム」(metabolic syndrome)と定義されている1)〜3).肥満が原因となって,先述のリスク因子が軽度でも集積して存在すると循環器疾患リスクが高くなることが知られており,メタボリックシンドロームは循環器疾患の一次予防において重要な概念となっている.わが国では,欧米諸国と比較して肥満者割合が依然として低い一方で,肥満を伴わないリスク因子保有・集積者における循環器疾患リスクがメタボリックシンドローム有所見者のそれと同等か,それよりも高いことが報告されるなど4)〜7),非肥満者におけるリスク因子保有・集積の重要性が認識されている.
本稿は,リスク因子の集積に焦点を当て,わが国の疫学研究成果を踏まえて循環器疾患への影響を検討する.さらに,循環器疾患一次予防に関する包括的なリスク評価と,公衆衛生上の対策について概説する.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.