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はじめに
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて,大会運営の調整,競技会場の整備,受け入れ準備などが急ピッチで進められている.その中で,取り組みの歩みが遅いと感じるものがある.受動喫煙対策である.2014年までに世界49カ国で屋内全面禁煙の法規制が施行された一方,WHO(World Health Organization)は,わが国の受動喫煙対策について4段階評価の最低レベルと評価している.
国際オリンピック委員会(International Olympic Committee:IOC)は1988年のカルガリー大会から禁煙を採択しており,2010年にはWHOとIOCが,たばこのないオリンピックを共同で推進することに合意した.これまで大会が開催されたロシアと韓国は屋内施設を全面禁煙とし,今後,開催予定である北京市は,それに加えて,一部の屋外についても喫煙を禁止する条例を施行した1).
わが国では,2018年3月に受動喫煙対策を強化する健康増進法の一部を改正する法律案が国会に提出され,同年6月に審議入りし,7月に可決,成立した.改正法では公共施設の屋内は完全禁煙とされ,罰則付きで義務付けをしているが,経過措置が設けられている飲食店もある.施行期日は2020年4月1日である.近年のオリンピック開催国としては最も緩い法整備となる.
たばこが及ぼす健康への悪影響は万人の理解となっているが,なぜ,対策が進まないのであろうか.日本たばこ産業株式会社(JT)が2017年5月に実施した「全国たばこ喫煙者率調査」では,喫煙者率18.2%(男女計),喫煙人口推計値は1,917万人(男女計)である2).非喫煙者が80%を超える国で非喫煙者を守る受動喫煙対策が進まない.本当に不思議である.
本稿では,宮城県柴田町(以下,当町)で受動喫煙防止対策として公共施設の敷地内禁煙が実現できたことについて,これまでの取り組みを述べる.他の自治体における受動喫煙防止対策の参考としていただければ幸いである.
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