連載 リレー連載・列島ランナー・115
ポピュレーションアプローチはあなたの職場でも—宮城県における2つの取り組み
相田 潤
1,2
1東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野
2宮城県保健福祉部
pp.789-793
発行日 2018年10月15日
Published Date 2018/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208994
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
大学研究者と宮城県庁との兼務
秋の空も高くなってきた2012年10月,東北大学大学院歯学研究科で教員を務めていた私は宮城県庁に行くことになった.県庁との兼務を拝命することになったのだ.それは,歯科公衆衛生研究に従事する私の研究者人生に大きな示唆と,それといくばくかの負担をもたらす人生のある種の転機であった.
当時,宮城県庁には歯科医師や歯科衛生士が存在しなかった.2011年の東日本大震災の際に宮城県歯科医師会が救護活動への参加を県庁に申し出たが,健康推進課と医療整備課(現 医療政策課)の間でたらい回しになったというのは,その筋では有名なエピソードである.これが「大学からタダでもいいから人を出そう」という,わが小坂健教授の宮城県の歯科公衆衛生の現状を危惧するが故の建設的な提案につながった.そして,その白羽の矢はいとも簡単に私を射抜いたのである.こう書くと,歯科公衆衛生研究に従事する人材が東北大学に少ないように聞こえるかと思うので,フォローしておくと,そもそも日本全体に公衆衛生研究を行う歯科医師が少ないのである.歯科では特にマイナーな研究分野と認識されているのかもしれないが,私はその現状に怒りとともに立ち向かっていると自認している.また,小坂教授は医師なので,そもそも矢の当たる的にはなっていないのだ.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.