特集 感染症に関するサーベイランス
結核菌サーベイランスシステムの構築
御手洗 聡
1,2
1公益財団法人結核予防会結核研究所抗酸菌部
2長崎大学大学院医歯薬学総合研究科基礎抗酸菌症学
pp.28-33
発行日 2018年1月15日
Published Date 2018/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208810
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はじめに
結核は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)がエアロゾル感染する疾病であり,感染者は一般に潜在感染状態(latent tuberculosis infection:LTBI)を経て一定の確率で発病する.現在のわが国の結核患者の主体は,過去の結核高まん延期にLTBIとなった高齢者であるが,青壮年層にもアクティブな感染伝搬が存在しており,新規感染・発病と思われる症例が発生する.結核発病者(排菌患者)は“一定の条件”下で他者への結核感染を惹起し,新たなLTBIや活動性結核患者を再生産する.
“一定の条件”は,過去においては家庭・職場などでの感染であったが,現在ではコミュニティー内での無作為接触であり,さまざまな伝搬経路が考えられるため,実地疫学調査だけでは感染ルートを特定できない場合も多い.また,耐性結核高まん延地域からの輸入感染症として耐性結核も増加しており,その浸淫ルートの解明が必要である.
本稿では,上記の点と,時間横断的あるいは縦断的な利用を考慮した結核菌サーベイランスの構築に当たっての課題,また,その構想について述べる.
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