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はじめに
今から約150年前の明治時代に初めて薬剤師は誕生し,同時に医薬分業制度が導入された.しかし,処方箋受取率が70%を超えたのは2015年度であり,ようやく薬剤師が医療の分野で一定の役割を果たしているといえるようになった.現在の状況に至ったきっかけは1974年の処方箋料の増額であるが,“薬漬け医療”や薬害の多発を受けて本格的に医薬分業に舵を切られて以来,実に約40年もかかった.
処方箋の発行が急増した最近の20年間は,薬剤師を取り巻く状況は年ごとに変化してきたといえる.以前は,病院薬剤師は処方箋調剤主体の業務を担っていたが,開局薬剤師は処方箋調剤に触れることもなく,一般用医薬品販売を主体とした業務を担っていた.彼ら・彼女らは確かに“町の科学者”的役割を果たしていたのかもしれないが,医療への関わりは薄かった.しかし,この40年の間に薬局の収入の大半が保険調剤となり,開局薬剤師も保険調剤という医療の一端を担うこととなった.
上記の状況を見据えて,2006年に6年制薬学教育がスタートし,基本として6年一貫教育のうえで薬剤師免許受験資格が与えられるようになった.医療薬学教育へのシフトである.
わが国は超高齢化社会に向けて着実に進んでおり,急性期医療をもとに制度設計されていた医療福祉全体が,慢性期医療を組み込んだ制度への転換を余儀なくされている.2000年の介護保険の創設もその一環であった.そして,団塊の世代が全て後期高齢者になる2025年をめどに地域包括ケアシステムを構築することに向けて,各医療・介護・福祉職がさまざまな検討と対策を図っている.
公益社団法人日本薬剤師会(以下,日薬)も2025年に向けて,医療・介護・福祉の有機的な制度運用を図る薬剤師を育成するため,①学部教育における実務実習の受け入れ体制の整備,②生涯学習の充実,③健康サポート薬局制度の発展に向けた研修体制の整備,などに取り組んでいる.本稿では,卒後の生涯学習に関して日薬が実施している事業の概略を述べる.
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