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はじめに
わが国は社会変化に対応して“地域包括ケアシステム”の構築を目指している.地域包括ケアの定義は,2013年12月に成立した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」第4条第4項に,「地域の実情に応じて,高齢者が,可能な限り,住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,医療,介護,介護予防(中略),住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」と規定されている.
一方,薬剤師には地域での活躍が期待されている.それは,在宅医療および介護への貢献と,セルフメディケーションの推進による健康支援という役割への期待である.
本稿では,薬局・薬剤師の地域展開の意味を考えるにあたって,猪飼1)2)の示す健康概念の転換と生活モデル化の社会理論を援用する.これは,国際レベルで健康概念の転換が起こっているというものであり,その転換とは,医学モデル〔治療医学によって規定される健康/病気(障害)の認識枠組み〕から生活モデル〔生活の質=quality of life(QOL)によって規定される認識枠組み〕への変化である.この変化が,より地域的でより包括的なケアを必然化しているという理論である.
上記の理論に立って,薬局・薬剤師の地域展開がどのような文脈の中で行われてきたのかを明らかにすることで,薬局・薬剤師の地域展開の意味を理解することを本稿の目的とする.また,その理解のために,日本の薬剤師の職能と立ち位置の変化について概観し,“生活モデル”化が薬局・薬剤師の職能変化にも浸透してきていることを明らかにする.さらに,1993年に日本で開催されたFIP(Fédération Internationale Pharmaceutique:国際薬剤師連盟)で紹介された“Pharmaceutical Care”が薬剤師の行動原理(philosophy)として薬剤師のあり方の「生活モデル化」を象徴しており,これからの薬剤師の姿勢をうたったものであることを示す.
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