特集 予防接種政策
トラベラーズワクチンの現状と課題
金川 修造
1
1国立研究開発法人国立国際医療研究センタートラベルクリニック
pp.575-582
発行日 2017年7月15日
Published Date 2017/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208703
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はじめに
統計によると,2000年代になって日本人の海外渡航者数は毎年,約1,700万人となっている.一方,海外からの来日者の数は近年急増しつつあり,2015年には邦人の海外渡航者数を上回る約1,900万人となっている.2015年には約3,600万人が海外から日本へ出入国したことになる(図1)1).このような現象は,経済のグローバル化による企業の海外進出や教育研究機関の国際交流のための留学などの社会的な事情,また,交通手段の発達などによって,ますます強まることが予想される.
国際的な移動によって懸念される重要な課題の一つに健康問題が挙げられる.それぞれの地域では,その環境や経済状況,さらには保健医療対策の違いによって医療事情が異なっている.そのため,異なる地域へ移動する場合には,移動先の状況にあった対策をとる必要がある.特に感染症に関しては,麻疹や結核などの旧来から地域で流行が起こっている感染症や,SARS(Severe acute respiratory syndrome)やエボラウイルス感染症のような新興感染症がヒトやモノの移動に伴って世界に広がることを予防することが公衆衛生的に非常に重要なこと認識されている.
本稿では,国立研究開発法人国立国際医療研究センター(以下,当センター)のトラベルクリニックで行っている感染症対策として最も重要,かつ効果的であるトラベラーズワクチン接種の現状と今後の課題について述べる.
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