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はじめに
近年,動物由来ウイルスによるヒトにおける感染症(新興ウイルス感染症)が発生し,それらに対する国際的に連携した対策が求められている.2013年12月〜2015年にかけて,西アフリカ(リベリア,ギニア,シエラレオネ,マリ,ナイジェリア)でエボラウイルス病(Ebola Virus Disease;EVD:これまではエボラ出血熱と呼ばれていたが,国際的にEVDと呼ばれるようになった)の大規模流行が発生した1).また2003年に中国および世界各地で流行が確認された重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome;SARS)2),2013年に報告された中近東で流行が確認されている中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome;MERS)3),トリインフルエンザウイルスによるヒトでの感染症(高病原性トリインフルエンザウイルスH5N1やトリインフルエンザウイルスH7N9による感染症)流行4)5),2011年に中国で発見された新規ブニヤウイルスによる感染症〔重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome;SFTS)〕等々,致死率が高い新興ウイルス感染症流行が発生している.
世界保健機関(World Health Organization;WHO)は新興ウイルス感染症の中でも,EVD,マールブルグ病(Marburg Disease;MD),ラッサ熱(Lassa Fever),リフトバレー熱,クリミア・コンゴ出血熱(Crimean-Congo Hemorrhagic Fever;CCHF),ニパウイルス脳炎,MERS,SARSに対して対策が必要な感染症と位置付けている6).
SFTSは日本でも流行していることが明らかにされた7).新興ウイルス感染症対策(ワクチン開発を含む)は,日本国内でもなされるべき課題である.2014〜2015年の西アフリカにおける大規模EVD流行を踏まえて,改めて致死率の高い新興ウイルス感染症に対してもワクチン開発が必要であることが再認識された.
本稿では新興ウイルス感染症の流行状況とこれらのウイルス感染症に対するワクチン開発の現状について解説したい.
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