特集 がん対策の加速化
小児・AYA世代のがん対策の課題と展望
堀部 敬三
1
1国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター
pp.234-241
発行日 2017年3月15日
Published Date 2017/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208629
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小児および思春期・若年成人(adolescent and young adult;AYA)世代は,がんの罹患および死亡率が最も低い世代であるが,死因順位ではがんは病死の第一位で自殺や不慮の事故に次いで多い.小児がんの治療は,この40年間に飛躍的な進歩を遂げ,80%の患者で治癒が期待できるようになったが,長期生存者が増えるにつれ,長期的な影響が明らかになり,晩期合併症の予防や治療の対策が求められている.一方で,いまだ難治のがんも数多くあり,それらの病態解明や治療開発も待たれる.こうした中,2012(平成24)年6月に第2期がん対策推進基本計画において小児がんが重点項目の一つとなり1),2013(平成25)年2月に小児がん拠点病院15機関,2014(平成26)年2月に小児がん中央機関2機関が指定された.このように,小児がん医療の体制整備が開始され,治療開発の研究も推進されている.
一方,AYA世代のがんは,欧米において治療成績の改善が乏しいとされ,その背景にあるAYA特有の心理・社会的要因を踏まえたがん対策が進められている.わが国では,2015(平成27)年6月に策定された「今後のがん対策の方向性について〜これまで取り組まれていない対策に焦点を当てて〜」の中でAYA世代のがん対策の必要性が指摘され2),同年12月のがん対策加速化プランへの提言において「小児・AYA世代のがん対策」が柱の1つに掲げられた3).本稿では,これらを踏まえて,わが国の小児・AYA世代のがん対策のあり方について論考する.
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