連載 いま,世界では!? 公衆衛生の新しい流れ
Neglected Tropical Diseases—SDG時代の熱帯病制圧対策プログラム
矢島 綾
1
1WHO(世界保健機関)西太平洋地域事務所 マラリア・ベクター媒介・寄生虫疾患対策部
pp.164-169
発行日 2017年2月15日
Published Date 2017/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208615
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2015年9月に国連総会で,今後15年間で国際社会が目指していくべき17の目標と169のターゲットから構成される「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され,「すべての人が必要な医療サービスを経済的な困難なく享受できることを目指すユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)の達成」が保健に関する持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals;SDGs)として設定された.また,格差拡大というミレニアム開発目標(MDGs)の経験と教訓を踏まえ,SDGs達成取組の過程で,地球上の誰一人として取り残さない(leaving no one behind)ことが誓約された.これを機に,これまでMDGsの保健目標であった「HIVエイズ,マラリア,その他の疾病の蔓延の防止」の達成に向けて,短期間にできるだけ目に見える成果を得るために疾患別の縦割りプログラムを主軸として進められてきた感染症対策は,保健システム強化や他セクターとの連携にフォーカスした疾患・分野横断的アプローチへと変革が求められている1).
そんな中,2016年5月の世界保健総会(WHA)は,新たにマイセトーマ(Mycetoma,菌腫)を「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases;NTD)」に追加することを採択し,NTDに含まれる特定熱帯病は,以下4条件を満たすとされる寄生蠕虫(ぜんちゅう),細菌,原虫,ウイルスを含む計18疾患となった2).
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