特集 行政保健師の質の保証—卒後教育・CPD
自治体における統括保健師の配置の状況と役割の発揮—行政政策に関わる後輩につなぐ
中板 育美
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1公益社団法人日本看護協会
pp.894-902
発行日 2016年12月15日
Published Date 2016/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208563
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2025年前後の医療や介護の需要増大に対応できる社会保障制度の新たなモデルとして「地域包括ケアシステム」の構築が要請されている.このシステムは,高齢者の尊厳が守られ,個別性が尊重されることを基本に,住み慣れた地域で必要な医療・介護等サービスが必要な時に一体的に提供されることで,高齢者自身の自立とQOLの向上を目指す仕組みでもある1).ヘルスプロモーションの観点から言えば,病気の悪化=入院という選択肢の乏しい時代から脱し,自分らしい生き方の延長線上にある「死」を,自らがどう捉え,自分の終末期をどう生き,どう最期を迎えるかをデザインできる時代が望ましく,その可能性を専門家や住民,当事者がともに考えたり役割を分かち合う形で実現していくことを示唆しているとも言える.
また,低成長経済の遷延など社会的趨勢の余波により,保健師に課せられるテーマは,高齢者対策のみならず,生活習慣病対策,介護予防,自殺,DV(Domestic Violence),子ども・高齢者・障害者虐待,健康危機管理などあらゆる領域に起こる健康格差も含めて,多分野にまたがっている.これらの課題を,量的データや多層的な医療・福祉資源をつなぐケア・ネットワークなどの質的データから判断し,実態から導かれる専門的なヘルスニーズや行政ニーズとして提示することが求められている.しかもその解決策は地域特性に応じる必要がある1〜4).
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