連載 いま,世界では!? 公衆衛生の新しい流れ
グローバル化と産業保健
川上 剛
1
,
佐野 友美
2
1ILO(国際労働機関)労働行政・労働監督・労働安全衛生部
2公益財団法人 大原記念労働科学研究所
pp.287-291
発行日 2016年4月15日
Published Date 2016/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208409
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経済社会における急速なグローバル化の進展に伴い,産業保健に対するニーズが高まっている.これまで産業保健は先進工業国における課題とみられる場合もあったが,現在では多くの工業製品の生産拠点が途上国に移り重要な公衆衛生上の問題となっている.また,農業をはじめとする第一次産業においても,機械化や新たな生産技術の導入が進み,従来からある重量物の運搬や厳しい自然条件のもとでの作業環境に加えて,産業保健上のニーズが増大している.一方でヨーロッパや日本等の先進工業国の多くでは労働災害の件数は減少傾向にあるものの,高齢化社会を迎えて,中高年労働者に適した労働環境を提供し労働災害・職業病を予防するという課題がますます重要になっている.2015年に発効されたEUの第2次産業保健戦略1)においては,中高年労働者の安全・保健の向上,中小企業に対する産業保健サービスの向上,職業病の過少報告の克服の3点が優先課題となっている.
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