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監察医制度と熱中症
東京都23区内で発生したすべての異状死(内因性急死,外因死および不詳の死)は死体解剖保存法第8条に基づき監察医が検案し,死因の不明な場合は解剖が施行され死因が決定される.高齢化,核家族世帯の増加等により,取扱件数は1998年に1万件を超え,近年では年間13,000〜14,000件で推移している1).これは東京都23区における全死亡者の約2割に相当し,東京都監察医務院では毎年検案・解剖全事例の死因統計をホームページ上に公開している1).ホームページ上には異状死全例の統計だけでなく,孤独死2),入浴中突然死3),そして今回のテーマである熱中症死亡者の発生状況4)も公開しており,公衆衛生の向上に貢献している.その他毎年一般市民を対象に公開講座を開き5),多数の異状死分析結果から得られた突然死予防施策を社会に還元している.
例年全異状死の約7割は病死であり,その内訳としては虚血性心疾患を代表とした心・血管系疾患による突然死が最も多い.循環器疾患の発症が冬季に多いことを反映してか一般に検案数は冬季に多く,夏季に少ない傾向を示すが,近年夏季においても検案数の増加が認められる.これは猛暑下における熱中症関連死の影響と考えられる.熱中症による死亡は死亡診断書(死体検案書)の死因の種類「8 その他」に分類される外因死であり,東京都23区内で発生したすべての熱中症死亡例,もしくは熱中症が疑われる死亡例はすべて,警察の検視を経た後に監察医の検案を受けることになる.そのため東京都監察医務院では東京都23区内で発生したすべての熱中症死亡例の把握が可能であり,記録的な猛暑により熱中症死亡者が増加した2007年8月には監察医務院から報道関係に対して熱中症の予防を訴える警笛を鳴らした6).
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