講座 臨床から公衆衛生へ
熱中症
三浦 豊彦
1
1労働科学研究所
pp.426-427
発行日 1979年6月15日
Published Date 1979/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205864
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熱中症の歴史■
日本の夏の高温高湿は今に始まったことではない.この外気の高温高湿が職場に影響を与えたし,職場に熱源が存在すればさらに耐えがたいものになった。
徳川時代の書物や絵巻のなかには,いくつかの熔鉱炉前作業の図がある.このなかに吹大工(現在の炉前工)が描かれている.平瀬徹斎の編んだ『日本山海名物図会』や住友家の刊行した『鼓銅図録』には,吹大工が防熱用の衣莚を着用している図があるし,『生野鉱山絵巻』には吹大工が衣莚を着用し,顔には「顔カケ」といって,布を張ったものをかけている図が見られる.説明には「吹大工ノモノ顔カケト唱へ布ヲ張リタルモノヲ顔エカケ体ニハ衣トトナへ叺ヲカケ火気ヲ凌キ吹方イシ候」とある.つまり,徳川時代,鉱山の製錬所では簡単な防熱衣や防熱面を使用しなければならぬほどの職場が存在していたのである.
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