特集 危険ドラッグ対策
精神科臨床からみた危険ドラッグ乱用の現状と課題
成瀬 暢也
1
1埼玉県立精神医療センター
pp.228-232
発行日 2015年4月15日
Published Date 2015/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208153
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危険ドラッグとは,大麻や覚せい剤などの中枢神経に作用する違法薬物に類似した性質をもち,法で規制されないように化学構造式の一部を変えた物質の総称である.この定義で考えると,危険ドラッグは無数に作り出すことができる.
気分を高揚させたり落ち着かせたり多幸感を得たりする目的で乱用されるが,これまで人が摂取したこともなければ,動物実験さえ行われていないものを体内に入れているため,極めて危険であることは容易に想像できる.自ら人体実験をしている,と言われるゆえんである.さらに,規制されるたびに強力なものが新たに登場しており,わずか数年で非常に危険で粗悪な物質に変貌した.現在,わが国で最も危険な薬物と言っても過言ではない.また,多くの危険ドラッグは単剤ではなく複数の物質が混ぜ込まれている.興奮系と抑制系が同一商品に入っていることも多い.医療機関の検査で物質を同定することは不可能であり,症状を診て対症的に治療対応するしかなく治療的な困難も多い.
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