衛生公衆衛生学史こぼれ話
53.シラミと発疹チフス
北 博正
1,2
1東京都環境科学研究所
2東京医科歯科大学
pp.715
発行日 1988年10月15日
Published Date 1988/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207799
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第二次世界大戦の末期に南イタリアに上陸した連合軍(主として米軍)は,退却するドイツ軍を追って北上し,多数の補虜を収容したが,彼らの被服は垢と泥にまみれ,不潔きわまるものであったに拘わらず,このような非衛生状況につきもののシラミを持っている者が極めて少ないことに米軍側は気付き,さっそく専門家が調べた結果,つぎのことが明らかになった.即ち彼らの下着にはシラミを殺滅する薬物がしみこませてあること,さらにその物質がDDT(Dichloro-diphenyl-trichloroethan)であることをつきとめた.
この物質は1874年O.Zeidlerによりはじめて合成され,1938年P.Müllerにより殺虫作用が認められ,Müllerはこの業績により1948年ノーベル医学・生理学賞を受賞した.
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