特集 公衆衛生とエイズ
公衆衛生とエイズ
山形 操六
1
Sōroku YAMAGATA
1
1(財)エイズ予防財団
pp.650-653
発行日 1988年10月15日
Published Date 1988/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207781
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■はじめに
エイズは1981年6月,米国で患者が確認されて以来すさまじい勢いで世界に蔓延し,1987年8月では世界で確認されているエイズ患者数が5万6千余人,1988年5月では9万6千余人(表1),さらに最近WHOの発表では,6月中に世界のエイズ患者は10万人を突破し,この6カ月間で2万5千人も急増していること,また,WHOの予測では,今後5年間に患者数は5倍になるであろうという報告をして,問題の深刻さと危機感を訴えている.そして,エイズ患者の1人平均治療費は生涯で5千〜8万ドル(米国)のほか,研究や教育の実施により間接的に必要とする経費は,治療費の3.5〜7倍にも達するであろうとしている.1991年には米国の治療に関する直接経費は85億ドル,研究等の間接経費は660億ドルにも達し,これは米国の全病床の12%(1986年では2.7%)を占めることになろうとも予測している.
わが国においても,1985年3月,最初の患者が確認されて以後,1987年9月では50人,1988年5月では80人,うち46人死亡(表2)と発表されている.諸外国と比較してなお少数にとどまっているのは幸いであるが,最近の傾向として,女性の患者発生など,エイズの一般への感染が懸念される状況にある.
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