疫学ワークショップ・1
久山町研究と健康管理
上田 一雄
1
1九州大学医療技術短期大学部
pp.838-844
発行日 1986年12月15日
Published Date 1986/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207388
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
●はじめに
最近の循環器疾患に関する疫学研究の動向をみると,仮説の検定を目的とする実験的疫学から,大規模な疾病予防を目標にかかげた管理研究に流れが移行しつつあるようにみえる.疾病予防は疫学研究の最終ゴールであるが,その遂行の過程では純粋な研究の枠を踏み出して,システム化された広報活動や,公衆衛生上の予防活動が重要となってくる.本邦でも循環器疾患の予防戦略は老健法の施行に伴い,やっと端緒についたが,残念ながらその実態は,末端にまでシステム化された対策とは,いまだいい難いのが現状であろう.
一方,過去20数年間に,日本人の循環器疾患は変貌をとげてきた.脳卒中死亡率の著明な減少がみられ,循環器疾患の予防上の関心は心疾患に向けられている.久山町研究はこの20年間に,内科臨床医によって展開されてきた,循環器疾患の疫学研究である.この研究の展開のプロセスと,久山町住民間にみられた循環器疾患の動向を踏まえて,日本人の循環器疾患の予防上の諸問題を提起してみたい.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.