資料
利根川および荒川水系における日本住血吸虫症流行の消長
安羅岡 一男
1
,
入江 勇治
1
Kazuo YASURAOKA
1
,
Yūji IRIE
1
1筑波大学基礎医学系
pp.699-702
発行日 1986年10月15日
Published Date 1986/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207355
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●はじめに
日本住血吸虫症の流行地は,わが国では古くから利根川流域,甲府盆地,沼津—富士川附近,広島県片山,および筑後川流域の五つの地域が知られている.そのうち,利根川流域では1910年前後に本症の存在が確認されて以来,60年以上を経た1970年代に至るまで散発的な流行が報じられている.その流行の範囲は茨城,千葉,埼玉,東京の1都3県にまたがり,東西約120kmにおよぶ広大な地域にわたっている.しかし,甲府盆地,片山地方,筑後川流域などの他の流行地におけるような大規模な本症撲滅対策は実施されないまま今日に至った.それは患者数が他の流行地に比べて少なかったことや,流行地がそれぞれの都県の境界,いいかえれば行政の境界に位置していることなどが理由であったろうと思われる.
ここでは利根川および荒川水系における本症の流行の消長についてまとめ,そこに横たわるいくつかの問題点に触れたい.
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