特集 たばこと健康
喫煙と闘う世界の現状—たばこのない社会,世代を求めて
森 亨
1
Toru MORI
1
1(財)結核予防会結核研究所第二研究部疫学研究科
pp.268-274
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207245
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■たばこ(離れ)先進国
コロンブス以来たばこの先進地域としての欧米では,さしものたばこの流行もようやくおさまりかけてきた(図1,2).図1は英国における喫煙率の推移をみたものであるが,第二次大戦後ピークに達したあと1970年頃を境目に,かなり急速に下がっていることがわかる.他の多くの国でも,同様の経過をみることができる.目下の喫煙者率は表のようであるが(いわゆる先進工業国の中では,日本の男の高い率が目立つ),この下降のすう勢は今後も加速しこそすれ鈍化することはないであろうから,「今世紀末までには無煙世代を」というスローガンをまじめに唱える国(スウェーデン)すら出てくるわけである.しかしこのような状況は,ただこれらの国々の政府や国民が座視するままに到来したものでは決してない、1950年代以降次々と明らかにされた,喫煙の健康影響に関する医学的知見を真しに受け止めた国民と政府が,たばこ産業をはじめとする多方面からの障害や抵抗を乗り越えて勝ち取ってきた成果がやっとみえるようになってきたものである(図2).その結果英国,スウェーデン,米国などでは肺がんの死亡率が低下傾向に転じるという形で目でみえるようにすらなっている.
喫煙という社会的流行病を制圧するため,そして上にみた成果を挙げるためにこれら欧米の国々が現在どのように闘っているかを,以下に手元の資料からまとめてみたい.
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