特集 公衆衛生の歴史的発展と将来展望
保健・医療と福祉との統合をめざして—老人保健法を中心として
辻 義人
1
Yoshito TSUJI
1
1東北福祉大学社会福祉学部
pp.24-27
発行日 1985年1月15日
Published Date 1985/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206978
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■はじめに
第二次世界大戦に惨敗した日本は,多くの人命と財産を失ったが,一つの大きな教訓を得た.戦争の愚かさを知るとともに,人の幸福とは何なのかという深い反省であった.思えば高価な犠牲であったが,明治以来の軍国主義的,膨張主義的傾向から一転して,福祉国家を目指すことになったのはその表れである。憲法第25条に述べられている「すべて国民は健康で文化的最低限度の生活を営む権利を有する」は,主権在民を示すとともに,国民全部の福祉についてうたいあげているものである.そしてそのために国は社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上,及び増進に努めなければならないとある.つまり保健といい,医療といい更には福祉という三つの分野に分けられてはいるが,この分野は国民の幸せという共通目的のための手段,方法としてあるのであって,理念的には三位一体であって,今更その統合について論ずることはおかしいともいえるものである.
しかし現実には保健,医療,福祉は別々に一人歩きをし,その恩恵を受ける国民にとって,ちぐはぐな点がないではなかった.
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