特集 アメニティ・保健・福祉
看護におけるアメニティ
野口 美和子
1
Miwako NOGUCHI
1
1千葉大学看護学部
pp.491-497
発行日 1984年7月15日
Published Date 1984/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206889
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
■はじめに
看護ケアの目標は,患者の「安全」「安楽」「自立」である.しかし,近代以後,医療の場では予防・治療技術やリハビリテーション技術が発達し,目ざましい成果を上げるなかで,患者の安楽のための看護活動(患者にアメニティを与える)はどちらかというと,"心もとないもの""余分のもの""個人的なもの""感傷的なもの""非専門的なもの"とされ,研究の対象とされず,また仕事の順序としては後廻しにされた観があった.にもかかわらず,"優しさ""思いやり",は看護婦の人格的資質として大切であることだけは主張されて来たのである.
たしかにアメニティは,安全や自立とは少し異なった面を持っている.安全は生命にとって絶対的なものであり,自立は人生の目標である.したがって安全と自立は,医療者を含む全ての人の共通の目標となる.その両者の間にあってアメニティは主観的であり,したがって個人的である.また相対的であり,したがってうつろぐものである.このような性質のものは近代科学の対象となりにくかったし,公的制度にも馴染まなかった.しかし現実の患者の日常生活の世話をする看護では,アメニティはないがしろに出来ない要素である.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.