特集 思春期保健
思春期の精神衛生
大原 健士郎
1
Kenshiro OHARA
1
1浜松医科大学精神神経科学教室
pp.564-568
発行日 1983年9月15日
Published Date 1983/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206750
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
■はじめに
思春期は,各種精神病の初発時期であり,また神経症もこの時期に多く発現することが知られている.これは,著しい身体の発育とともに体液の不均衡から精神疾患の発病を促すこともあろうし,複雑な対人関係を中心として,成人社会からのストレスを直接うける機会が多くなったためでもあろう.それとともに,思春期の精神疾患では,教科書風な典型例に遭遇しない場合も多く,したがって治療面でも定石をふみ難いことも指摘されている.
思春期の精神障害は,さまざまな社会病理現象の形をとって出現してくる.自殺,家庭内暴力,校内暴力,非行,登校拒否……などがそれである.また,心身症や思春期やせ症などの形で,精神科以外の診療科を受診する者も少なくない.もちろん,これらのすべてが精神障害の結果であると断言するつもりはない.しかも,これらの状態像に精神障害が多かれ少なかれ関与していることは想像に難くない.しかも,ここで注意しておかねばならないことは,登校拒否を例にとってみても,その背景はさまざまであり,精神医学的には,うつ病や精神分裂病がかくされていたり,神経症の結果であったり,あるいは精神医学的な問題よりも,家庭や学校の問題がより大きく関与していたりして,同質のものとばかりはいえず,そのため,対策もケース・バイ・ケースにたてられねばならないということである.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.