特集 肥満
小児肥満
村田 光範
1
Mitsunori MURATA
1
1東京女子医科大学第二病院小児科
pp.549-558
発行日 1982年8月15日
Published Date 1982/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206569
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成人の死因として重要な位置を占める虚血性心疾患が,年々増加していることはよく知られた事実である1).虚血性心疾患の原因になるアテローム性動脈硬化症(以下単に動脈硬化症)の発生は,小児期にまで遡り,したがって動脈硬化症を予防するには,小児期からの予防(一次予防)が大切だと認識されるようになってきた.肥満は動脈硬化症の進行にとって一義的な危険因子とはされていないが,一義的な危険因子である高脂血症,高血圧,糖尿病などを誘発することから,肥満に対処することが重要になってくる.さらに文部省の学校保健統計調査報告書2)によると,図1に示したように,この10年間に肥満傾向児(傾向という言葉を入れたのは,標準体重より以上体重が増加していても肥満とは限らない場合があることを考慮したと思われる)は約2倍に増加し,その頻度が最大になる年齢が年々若年化していることがわかる.いいかえると,小児肥満の頻度が増加すると同時に発症年齢が小さくなってきているのである.
また,小児肥満は成人病発症の危険因子としてばかりでなく,小児期すでに,高脂血症,高血圧,脂肪肝,糖尿病の誘発などの直接的な障害をもたらしており,小児期肥満を現在の小児の健康の問題としてもとらえておかねばならない.
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