講座 臨床から公衆衛生へ
小児の肥満
土屋 裕
1
1東京都立清瀬小児病院小児科
pp.570-572
発行日 1980年8月15日
Published Date 1980/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206136
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
成人の肥満と心血管系の障害あるいは糖尿病との関連は既に周知の事実であり,成人病予防の見地から成人の肥満は治療ないしは予防すべき対象とされている.成人の肥満症に対する関心が一般化するにつれて,小児肥満症も注目され,また恵まれた食料事情を含めた種々の社会的環境下にあって,近年,小児肥満症が増加していることも事実である.しかし,成人病の対象としては年齢的に程遠い位置にある小児では,同じ肥満症でも成人のそれと全く同様に認識し,把握するわけにはいかない.
小児肥満症についても,広範囲の研究がなされているが,なおさまざまな考え方が交錯し,定まった見解を得るに至っていない.すなわち,一方の極端は小児肥満症のすべてを治療の対象とすべき病的状態として把握し,他の極端は,小児肥満症を単に精神衛生上の問題としてのみ捉えており,後に述べるような劣等感の原因にさえならなければあえて治療を行なう必要のない状態と考えている.この問題を最も単純に考えるなら,非生理的状態である肥満は生理的状態である正常体重に戻すことが望ましいといえるかもしれない.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.