特集 中高年の健康づくり
地域における健康づくり—とくに中高年を中心として
安西 定
1
Sadamu ANZAI
1
1昭和大学医学部公衆衛生学教室
pp.240-246
発行日 1982年4月15日
Published Date 1982/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206507
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昭和39年に開催された東京オリンピックの成績が期待されたほどの成果があがらず,その原因はわが国民の体力,健康水準が諸外国に比べて劣っているためであるとの認識から,その年の12月に,「国民の健康・体力増強対策について」の閣議決定がなされた.この政府の方針に沿って健康の増進,体力の増強についての国民の自覚を高め,その積極的な実践を図るための行政的施策が推進されることになった.また,その頃,一方では時代の進展とともに,平均寿命の延長と中高年齢老の増加を主体とした人口構造の変化,高血圧,脳卒中,心臓病,がん等の成人病の増加,糖尿病,痛風に代表される代謝性疾患の増大,はたまた,高度経済成長の落とし子ともいえる公害問題,運動不足やオーバーカロリー等による肥満の増加等の問題が次々と惹起されてきた.このため従来の公衆衛生施策ではとても対応しきれない新しい情勢を迎え,国民健康と疾病との取り組みにおいて新たな施策が強く要請されるに至った.また,このような新しい国民健康をめぐる諸事情から国民一般に未だかつてなかったほどに,国民の健康に対する関心が大きく増大し,健康で長生きの願望,健康被害の恐怖(成人病,食品公害,環境汚染など)等国民ニーズの大きな変化が表面化したことは見逃してはならない重要なことである.
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