講座 公衆衛生学の最近の進歩・13
人口問題・保健統計—高齢化社会へ向かって
重松 峻夫
1
Takao SHIGEMATSU
1
1福岡大学医学部公衆衛生学教室
pp.52-61
発行日 1982年1月15日
Published Date 1982/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206463
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わが国の人口は近年急速に高齢化しつつあり,西暦2000年には現在の西欧諸国のレベルに達し,その後も高齢化がすすむと予測されている.この高齢化に対応する施策を論じる時,しばしば西欧老人国の福祉施策の例が引かれるが,これらの諸国はすでに高齢化の段階をすぎ,高齢社会であり,またわが国の高齢化はその速さが西欧諸国がかつて経験したものの数倍であり,その程度も未だ経験したことのない高度のものとなる点を十分に考えておかねばならない.
高齢社会はaged populationであり,高齢化があるレベルに達し,高齢者の割合がほぼ安定した社会で適切な高齢者対策が樹立されれば,基本的には将来にわたって対応が可能である.しかし,高齢化社会—aging of population—は高齢化が進行中であり,将来を予見した高齢者対策が樹てられなければならない.公衆衛生領域における保健福祉の問題とは特に大きな関係がある.予測されるわが国の高齢化は,速度も程度もともに人類未経験のものであるので,将来の予見を誤れば今日の対策も明日の現実に適応しなくなる惧れが多分にある.
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