特集 地域歯科保健
小児のウ蝕抑制
祖父江 鎭雄
1
Shizuo SOBUE
1
1大阪大学歯学部小児歯科学講座
pp.844-848
発行日 1981年11月15日
Published Date 1981/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206418
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小児期に発生するウ蝕は,成人に発生するウ蝕とはいささか趣を異にする.6年間隔で実施されてきている厚生省の歯科疾患実態調査報告から特徴的諸点をひろいあげる.初発年齢は依然として低く,1歳児でウ蝕罹患者率がすでに10%にもなる.またウ蝕乳歯は多発性でしかも進行が速く,重症化しやすい.さらに重要なことは,年齢によってウ蝕好発部位が変化することがある.この現象は,出生後からの成長発育過程で生ずる諸変化によって説明づけられる.
出生後小児は,摂取する食物の種類や摂取の仕方,摂取時間などからなる食生活パターンの変遷を遂げる.まず母乳期を経て,混合乳,人工乳,そして3〜4ヵ月頃から開始される離乳期を迎える.1歳6ヵ月頃までに離乳を完了し,離乳食から普通食へと移行する.2歳頃からは間食が次第に盛んとなり,幼稚園時代は自我の目覚めと共に間食の内容へと主張が加味されて行く.そして吸う,飲む,しゃぶる,咬むといった生理的な摂食運動の変化を見せる.一方口腔では,無歯期から6ヵ月頃には第一生歯を見,2歳6ヵ月頃までの乳歯萠出期を経て,乳歯列安定期を迎える.6歳時には永久歯が萠出を開始し,混合歯列期に入る.このような食生活の変化と口腔の生理的変化とにより,ウ蝕の好発時期と部位とに特徴的パターンが生ずるのである.
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