特集 第21回社会医学研究会総会報告
第21回社会医学研究会総会主題「健康とその公的責任」のめざすもの—あいさつに代えて
芦沢 正見
1
1国立公衆衛生院
pp.93-94
発行日 1981年2月15日
Published Date 1981/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206242
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1980年の幕が上がった今年は,ジャーナリズム挙げて80年代の展望におおわらわである.それらは異口同音に,80年代は国際的にも国内的にも予断を許さない厳しい時代であり,国際的にはエネルギーと資源問題,国内的には高齢化社会に向けての加速度的な驀進を筆頭に挙げて,政府・総資本もその対応策に迫られるであろうとし,他方,科学技術の驚異的進歩は医学・生物学の分野に限っても,たとえば遺伝子の組み替え技術と特許権の問題がアメリカでトピックになるなど,寡占・独占をめざして産学協同体どうしの激しい角逐が演ぜられるであろう,としている.これら一連の遣伝子工学といわれる科学技術が公的な制御機構を欠いたかたちでいったん巨大資本の手ににぎられた場合には,これが地球上の生態系に対するいまだかつてない人為的な干渉であるだけに,放置するならば人間存在の意味や社会存立の基本条件さえも揺るがしかねないインパクトを持っているといっても,いいすぎではなかろう.
さて,われわれの保健の分野で最近目立つことは,周知のように,にわかに健康の維持・増進の自己責任論が政府関係筋より強調され,関連して△△センターづくりが推進されつつあることであるが,これは医療財政の赤字の累積と無縁ではあるまい.
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