学会だより 第11回日本老年学会総会から
シンポジウム「老人医療と福祉の問題点」
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1本誌編集室
pp.64
発行日 1980年1月15日
Published Date 1980/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206015
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昨年10月5日午後,老年医学会,老年社会学会などと平行して,第11回日本老年学会総会(会長=金子仁郎阪大名誉教授)が,大阪市の毎日ホールで行われた.会長講演および特別講演3題とシンポジウム1題がその内容であるが,本稿では金子仁郎・岡村重夫(大阪社会事業短大)両氏の司会の下に行われたシンポジウム「老人医療と福祉の問題点」について,そのあらましを紹介する.
まず「ねたきり老人の問題点」と題して奈倉道隆氏(大阪社会事業短大)は,京都市堀川病院の居宅看護部が行った訪問看護評価の資料をもとに,寝たきり老人のうち50%の者が実際には歩行できるにもかかわらず寝たきりになっているという実態を紹介,寝たきりとなっている要因として,家族の介護力の減少,なにごともスピード化の激しい最近の生活環境に対する老人の不適応,老人の役割の減少,80%の老人が定期検診を受けているにもかかわらず,その医療内容は注射と投薬のみで,リハの適応となる老人について,リハが行われているケースが20%に過ぎないことなどを挙げ,病気は治らなくても生活環境の改善を考える医学の必要性を強調した.また25%の老人は完全寝たきりで,失禁・痴呆を生じており,これらの老人に対しては入浴サービスなどの訪問介護,ボランティア活動,老人福祉施設などでのケアが行われているが,行政のタテ割体制の弊害を打破することが必要であると述べた.
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