特集 環境汚染による健康被害者の救済
公害健康被害補償制度の経緯と現状
磯野 弥生
1
1東京経済大学行政法
pp.376-385
発行日 1979年6月15日
Published Date 1979/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205851
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
■はじめに
公害による被害は,人の健康の損傷,農薬,漁業への被害,これらにより生活の破壊をもたらす.戦前から,農業生産,漁業被害に関しては,足尾をはじめとする鉱業による被害,あるいは工業都市における煤煙,その他による被害などを例として,すでに数多くの労作が著わされている.生産手段に対する被害が,それ自体で生活をなりゆかせなくしていることは,もちろんである.そして,そのような被害をもたらす加害行為が,多くの人体被害をも,実際には引き起こしてきた.
が,人体被害に対する本格的な救済が論議されるのは,戦後も15年を経る頃となるまで待たなければならなかった.水俣病やイタイイタイ病,そして新たな形の公害病として当時いわれてきた四日市ぜんそく等に対する住民運動までの間,被害は隠蔽された形となって埋ずもれていたといってよいであろう.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.