特集 保健行動
行動計量学的接近の諸問題
林 知己夫
1
1(文部省)統計数理研究所
pp.760-764
発行日 1977年11月15日
Published Date 1977/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205504
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I.個人と集団の問題
われわれが人間の現象を取り扱うに際しては,個人と集団の問題をまず考えておかなくてはならない.保健行動のようなものを考えるに際しても,全く同様である.個人のを行動集団に積みあげ,全体を背景にして個人の位置づけを行うとともに,個人の集合を通して,保健行動に関する人々の心の構造やはたらきの姿を明らかにすることが大事である.1人ひとりの行動を見ていたのではわからなかった「人の心の動き」が,集団を通して適切な分析が行われるならば,そのかくれた姿をあらわしてくることがあるわけである.このように,個の集合としての集団の分析結果は大事な筋目をあらわしているものであるが,しかし,それがすべての個人にあてはまるものではないのである.集団を通して得られた情報は,大局の姿であり,われわれの知見の大きな支柱となるものであり,これを踏まえて,個人差ある個人に対して対慮するにはどうしたらよいかを考えることが大事である.医学のようなものにあっては当然のことであろう.個人の問題は,集団情報をもとにしての最適過程制約ということになろう(この表現は決して冷たいものではない.これについては文献を参照1)).
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