特集 保健行動
保健行動研究の最近の動向
山本 幹夫
1
,
寺尾 浩明
1
1帝京大学・公衆衛生学教室
pp.746-754
発行日 1977年11月15日
Published Date 1977/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205502
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I.行動科学の方向
人間行動に関する一般理論を研究しようとして19世紀も終わりに近くアメリカに誕生した科学に,行動科学(behavioral sciences)がある.この科学は,特に軍事問題など実践的問題の解決のために,米国哲学の中核をなすともいわれるプラグマティズムや機能主義を支柱として発展したともいわれるもので,人間行動を通して,人間の考え方までをもうかがおうとするものである.これが,社会科学に自然科学的研究方法を導入するためのよりどころをつくった,とさえいわれている.また,この科学を活用して,一方で記述科学としては,人間行動に関連して社会学,心理学,人類学,政治学,経済学,生物科学,医学などの諸科学を総合した学際的な科学を発展させようとしており,また他方,これは,その応用によって人間の行動の予測をもしようとするものである.
この科学は,軍事関係以外においても,行政,産業,マスコミなどの問題に関連した諸科学の協同研究を実施している過程で,発展したといわれている.人間行動という複雑な事象の解明とその実践的活用という共通の目標を達成するためには,上記のような専門的な諸科学に従事するものが,共通な立場にたって協同し,複合的な基礎科学をつくるだけでなく,共通の目標達成のための応用的な政策的科学としても完成させる必要があり,上記の諸分野の協力によって,順次それらが実現されていった1).
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