研究
学童の糖尿病と糖尿の頻度および対策
野尻 雅美
1
1山形大学医学部公衆衛生学講座
pp.638-644
発行日 1976年9月15日
Published Date 1976/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205269
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はじめに
学童における医学上の予防対策は,近年,結核の急激な減少により,従来比較的稀と考えられてきた疾患,例えば腎疾患等に向けられろようになり,このために学校検尿(尿蛋白検査)が制度化されるまでになった.そこで,この検尿の際にわずがな労力と経費を負担することにより尿糖検査を行えば,小児糖尿病の早期発見が可能であるということで,現状では各地で実施されているようである.学校検尿が広く行われるようになってから,学童にも尿糖陽性者が存在することが明らかになった.しかし,尿糖陽性者が糖尿病者であることは比較的少なく,この両者の区別をはっきりと認識しておく必要が出てきている.このために,尿糖陽性者の病態や小児糖尿病への移行等についての検討が,今後の大きな課題となっている.
学校保健の現実の問題としては,学校検尿によって発見された尿糖陽性者(軽度の糖代謝異常者を含めて)をいかに取り扱い管理したらよいか,ということがある.また,成人の糖代謝異常の経験・研究から得られた知識をそのまま学童に応用してよいものかどうか,という疑問も残る.いまだに一定の取り扱い基準のない現状では,個々の対象者に対して常に慎重な態度でのぞむことが必要であり,これらの経験を積み重ねることによって,正しい管理方式が得られることが期待されるのである.
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