特集 医療と福祉
日常生活動作の自立のための援助のあり方—福祉資源・制度的な面から
大塚 隆二
1
1整肢療護園
pp.452-457
発行日 1975年7月15日
Published Date 1975/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205036
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はじめに
数日前,17歳の寝返りも出来ない重度脳性マヒ児で,50歳を過ぎた母1人,子1人の"Y夫"の母親から次のような電話があった.「若い頃罹かった右足の骨髄炎が再発し病院に通院中で,病院からは入院して手術をするように推められている.しかし後に残される"Y夫"のことが心配で入院も出来ない."Y夫"の介助や家事の手伝いのため祖母を田舎から呼び,なんとか一日一日を過ごしている.このままでは母子共倒れになってしまうので"Y夫"の施設入所を考え話合っているのだが,"Y夫"はどうしても施設に入るのは嫌だという.福祉事務所の人とも相談しているのだが,すぐには"Y夫"のような重度の身障者を入れてくれる施設は見つからない.見つかったとしても,"Y夫"自身が今のように施設入所を嫌がり暴れるようだと施設側は受入れを拒否するだろうと言われ,途方にくれている…」とのことであった.
"Y夫"は,4〜5歳の頃迄はA病院やB肢体不自由児施設に母親の附添で通いつづけたとのことである.しかし,母親の期待に反してその訓練効果はほとんどみられず,父親の病気,療養生活という悪い条件も重なり,次第に訓練にも通わなくなっていった.その後,通園していたところの職員や福祉事務所の職員からも通園の継続,就学年齢時には養護学校通学も強く推められたそうだが,通園・通学の附添が困難であることを理由に断り,以後17歳の今日迄,母親と2人きりの家の中だけの生活を送っていた.
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