資料
「公衆衛生」の新方向—米国における地方保健行政の分権化と統合化
前田 信雄
1
1国立公衆衛生院
pp.227-229
発行日 1975年4月15日
Published Date 1975/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204984
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1.はじめに
上意下達の行政の勢いに流れているのは,ひとり日本の公衆衛生だけではない.日本がそのお手本にした米国や英国でも,公衆衛生の行政そして事業そのものが,伝統的な法律と役所機構bureaucracyの上にのっかって動いている.特に州とか,日本でいえば都道府県レベルの行政が,地域の独自の主体的な仕事やアイデア,プロジェクトを真剣に応援するということではなく,旧態依然たる国レベルでの平均的業務指針のようなものをきめられたようにだけ順守し,中央政府からの資金調達の中間項としての任務を中心に動いている.中間行政レベルの衛生部局長の多くがいわゆる中央からの出向,公衆衛生財政の多くが中央政府各部局からのタテワリ事業別予算,という形態のもとでは,"地域住民のニードにそって"とか,"保健サービスの自主的・自治的運営",つまり分権化方向の実現はなかなか難しい.
米国の中間レベルでの公衆衛生行政にも,日本に似た上記の問題がある.人事の面は日本と違い,法律や規則の部分は州の独立性が建前となっているものの,財政やとくに最近はプロジェクトごとの補助金が連邦資金に大きく依存することから,どうしても「事なかれ主義」的行政の色彩が強い.
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