特集 くすりと健康
配置薬と地域保健
室林 貞一
1
1富山県薬剤師会
pp.86-90
発行日 1975年2月15日
Published Date 1975/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204956
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日本の医薬は,紀元前1世紀,西日本の弥生式文化が漢から青銅文化,鉄文化を導入した頃に,出雲民族によって端を発していると言われている.允恭天皇の御代に新羅から中国の本草学が伝来されてから,しばしば医術を導入すると共に種種の医薬も伝来されてきた.これらは朝延あるいは武家階級または僧侶などの手中にあって,待医とか藩医の間で研究発達したとはいえ,一般の大衆には比較的その恩恵が行きわたらなかったものと思われる.
1670年代の延宝,天和年間は,いわゆる民間売薬の発生期ともいわれ,奈良西大寺の豊心丹,西の京の梅軸軒蘇命散,京都堀の肝凉丹,京都太子山の奇応丸,京都井上の目洗薬,京都雨森の無二膏,汗戸喜谷の実母散,近江正野の万病感応丸などはこの頃に発売されたものといわれている.徳川の歴代将軍は医薬を奨励したが,その取締は緩漫であったので簡単に民間に普及されたが,一方偽物も多くなってきた.これらに対処するため各製薬本舗では種々研究し,いわゆる一子相伝の秘薬を製造販売するという傾向を示した.
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