発言あり
検診と健診
A
,
D
,
B
,
E
,
C
pp.577-579
発行日 1974年11月15日
Published Date 1974/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204911
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健康生活への模索
現代社会に住む私達が,健康への意識の変化を問題にする場合,人間という生命体のもっている基本的な特質に着眼する必要があろう.人間以外の動物は,自然への適応を習性としているが,人間は,自然に働きかけ,作り変える性質を持っている.こうした人間の営みは,物質文明,特に工業の発達を主としているが,元来,人間の生活への必要性から生まれた文明が,従来の形で展開される限り,自然の均衡を破壊し,短期間のうちに,地球は無生物の星になるという推論も成り立つであろう.鉱工業,畜産,自動車などから発生する公害により,私達の健康生活への不安は議論の段階を越えて,現実のものとなっている.WHOのいう「肉体的,精神的,社会的にも文句のない状態」が健康であるとすれば,公害物質による肉体的影響ばかりでなく,人間が作り出した環境の人間に与える影響についても,改めて問い返す必要があろう.私達の第1次的欲求から,現代社会における疎外感に至るまで,また,将来の子供に対しても,広範な不安が急速に拡大している現在,単に病気や怪我のない状態を健康と考えるだけではすまされるものではない.
一方,主に臨床的な診断と治療を扱っていたかつての医療が,現在では健康の保持,増進に関連して「健康の程度」を識別する領域にも関与していることは確かである.
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