特集 老人健康診査
老人保健と医療供給体制
朝倉 新太郎
1
1大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.599-604
発行日 1973年9月15日
Published Date 1973/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204719
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健診は,何も老人健康診査に限ったことではないが,必要な治療が確保されることによって,はじめてその目的が完結する.これは当り前過ぎる話であるが,老人健康診査の場合,この原則はあいまいなまま実施されて今日に至っている.そのため,たとえば先般発表された行政管理庁の「行政監察結果」が指摘されているように,健康診査そのものが,きわめて不十分なものになってしまっている.
そもそも厚生省は,この老人健康診査の目的を「老人は一般に有病率が高く,疾病に対して強い不安をもっているにもかかわらず,社会的および経済的理由により,受診の機会を阻まれている例が多いので,老人に受診の機会を与えることによって,疾病の予防および早期発見を行ない,老人の健康保持に資する」(福祉と国民生活の動向,昭和41年版)ことにおいているらしい.この文脈によると,ややうがち過ぎる読み方かもしれないが,疾病の予防,早期発見」と「老人の健康保持」の間にあって然るべき「適正な治療」とか「医療の確保」といった文は何故か欠落してしまっている.この矛盾,原則無視の結果は,老人健診自身がそれ程のびなかったことによって余り表面化しなかった.しかし,老人医療費の無料化という伏兵が現われて,今や事態は急変した.
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