特集 ONLY ONE EARTH
環境における長期微量汚染の人体に及ぼす影響
原田 正純
1
1熊本大学体質医学研究所
pp.171-175
発行日 1973年3月15日
Published Date 1973/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204635
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人類は有史以来,さまざまな中毒と直面してきた.中毒の最初の被害者は研究者であった.新しい物質,技術の開発の途上で多くの研究者が中毒になった.ついで,その生産課程では多くの労働者が中毒にかかり(産業中毒)そして今日,それは食物汚染や環境汚染を通じて一般の人々に中毒を多発させてきている(それを,われわれは公害病などという奇妙な呼び方をしているが).しかし,水俣病(メチル水銀中毒),カネミ油症(PCB中毒)などで示されるようにそれらはその原因となるべき物質の多量の急性の汚染による中毒が多かったのである.そういう意味では環境や食物経由の中毒とはいえその発生基盤は産業中毒と相似点も多かったのである.しかし,今日,われわれの環境は多種の毒物の微量な汚染が不気味に進行している.今後,問題になる中毒,また最重要な課題として注目しなければならない問題は長期微量汚染の人体に及ぼす影響である.しかも,その対策は今から手をつけはじめなくてはならなく,それが十分に危険だと立証されたときでは遅すぎるのである.1972年6月のストックホルムでの環境会議でもそのことが切実に感じられ,各国の学者の中にもその問題に関して一種の焦りさえも感じられたのである.微量汚染に関する問題を考える1つの材料として私は水俣病に関してレポートしてみることは無意味でないと考える.
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