特集 公衆衛生学の総合科学的深化
生態学の立場から—公衆衛生学の総合科学的深化
辻井 達一
1
1北海道大学農学部
pp.104-106
発行日 1973年2月15日
Published Date 1973/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204617
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環境と信号
生活する動植物に,無機的環境を含めた系(システム)を生態系(Ecosystem)とよび,多くの関連する諸問題を綜括的に考えようとする試みはタンスレー(1935)以来,有力になってきた.もちろん,生態系的な自然観はもっと古くて,フンボルト以来,いろいろな人によって述べられている.ダーウィンの生物の網目関係(1895),エルトンの食物連鎖(1927)などはその一つの具体化であった.
生態学における(あるいは生態学的な意味での)環境とは,単に物質的(物理的,化学的)なものだけではないし,単にある特定の生物の,特定の時点における環境に限定されるものではない.パブロフの犬における鐘(の音)と食料とのつながりでは,鐘も犬にとっては明らかな環境である.つまり,環境と,生体内部の状態(すなわち内的環境)とは常にリンクして動くものであって,これをバラバラなものとして見ずに,一つの系としてとらえることが必要になる.
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