特集 公衆衛生学の総合科学的深化
衛生工学の役割—大気汚染防止を中心として
井上 力太
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1北海道大学工学部衛生工学料
pp.107-110
発行日 1973年2月15日
Published Date 1973/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204619
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WHOの定義によれば,「衛生工学は人間の身体的,精神的ならびに社会的に良好な状態を増進するために,人間の物理的環境を工学的手段によって制御することと理解される」と述べられている.この定義によって衛生工学の目標,手法などは,ほぼその輪郭が表現されていると思われるが,現実は内容,手法などに未成熟の部分があり多くの問題点を内蔵している.
もともと衛生工学は,飲料水の確保と生活排水の処分のための技術の必要性から出発した.遠く2000年以上も前に,古代ローマはすでに上下水道施設を有していたといわれるが,本格的に上下水道が建設され,飲料水の浄化,排水の処理などの研究が始められたのは,欧米においてもここ200〜300年以内のことである.ともあれ衛生工学は上下水道建設を主体として土木工学の一分野として発達し,次第にその母体より分岐しつつある現状である.したがってその学問的手法においても,土木工学を主体とし,その中に衛生学,生物学,化学工学などを取り入れて成立してきたものであり,今日でも,これらの技術手法が,その主体であることに変りはない.
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