教室めぐり・34 京都大学公衆衛生学教室
喫緊な転換期の対策
徳永 力雄
pp.603
発行日 1972年9月15日
Published Date 1972/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204547
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本教室は昭和24年1月に誕生し,現教授の西尾雅七先生が初代教授として就任された.以来今日まで20余年間,広い分野で活発に活動してきたが,教室の状況は昭和35年ごろを境にかなり変化してきたように見受けられる.すなわち昭和35年以前は教室誕生の意気に燃えて30余名のスタッフがガムシャラに研究に従事した時期で,研究内容も鉛・二硫化炭素・ベンゼンなどの中毒に関する研究,国民栄養(ビタミン)に関する研究,医療体制(健康保険問題)・乳幼児死亡・結核など社会医学的統計学的研究,等々きわめて多岐にわたり数多くの仕事がなされた.35年以後は新制大学院制度発足とともにスタッフも少なくなり,長期のプロジェクトの下で過去の研究の発展と熟成を期した時期とでもいえようか.三つの研究班に分かれ,それぞれが独立に研究を進めているのでその現状を簡単にご紹介したい.
西尾教授,山下節義助手らは,社会医学的方法で公害,老人,社会福祉,結核,医療制度などについて大学内のみならず自治体や住民も含めた幅広い人々と共同研究を行なっている.西尾教授はかねがね,住民自治・地方自治に立脚した公衆衛生活動とその組織化の必要性を説かれているが,研究分野,方法においてもこの方針を貫ぬき,最近は公害防止条令(京都府)や森永ヒ素ミルク問題などについて大いに活躍している.
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