教室めぐり・30 福島県立医科大学公衆衛生学教室
深い県衛生行政との関わり
辻 義人
pp.190
発行日 1972年3月15日
Published Date 1972/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204444
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本教室は昭和28年4月に,初代桑原教授が着任したことから始まった.桑原教授は北大井上善十郎教授の薫陶を受けられた方であるが,同門の私を助教授として伴い札幌から移ったのであった.桑原教授は5年間在任の後に北大工学部衛生工学科教授として札幌に帰られ,助教授であった私が教授に昇任し現在に至っている.
教室の現在の研究の流れは,大別すると3つに分けることができる.その第1は民族衛生学的研究であるが,その源流は桑原教授時代にあるといえる.すなわち昭和29年に福島県の秘境といわれる桧枝岐(ひのえなた)村の調査を行なったのが,隔離集団の民族衛生的研究の嚆矢である.最近交通が盛んになるにつれて,隔離状態が失われつつあり,これに伴い貴重な資料が失われつつある.したがって,今のうちにこの研究を続けておく必要があるといえる.この考えのもとに,桑原教授離任後も県内各地に残存する隔離地区の調査が続けられ,現在は山形県に及んでいる実情である.隔離地区の調査にからんで,遺伝形質の遺伝子頻度と血族結婚との関係など,人類遺伝学的研究が進められるようになり,さらに染色体異常の発生に関する因子の追求にまで及んできている.本学臨床各科にて染色体異常が疑われる時,その核型分析は本教室が受持つ形になっているほどである.
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